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  • 技術コラム

ボイラー、火力発電所、原子力発電所向け

私たちは電気のある生活を日々送っています。それどころか、電気は生活する上で必要不可欠なものです。最近では、太陽光や風力などの再生可能エネルギーに注目されていますが、日本では石油や天然ガスなどを用いた火力発電や、原子力発電に頼っている現状にあります。 発電の原理は、やかん(ボイラー、原子炉)でお湯を沸かして湯気(蒸気)を作り、そのエネルギーで風車(タービン)を回し、発電機で回転エネルギーを電気エネルギーに変換するものです。

 火力発電所や工場のボイラーでは、石炭や石油、天然ガス、バイオマスなどの燃料を燃焼させ、そのエネルギーで水を蒸気にしています。また原子力発電所では、ウランなどの核分裂反応を利用して、そのエネルギーで水を蒸気にしています。従って、エネルギーで水を沸騰させて蒸気を作り、そのエネルギーで発電すると言う意味では火力発電所(ボイラー)と原子力発電所の発電原理は同じと言えます。 

 

家庭にてやかんでお湯を沸かして長期間使用していると、やかんの内側には白い物質、所謂「湯垢」が付着すると思います。また、やかんを長期間使用すると、稀に穴が開くことがあります。またやかんから出た蒸気が当たる壁にも、付着物が付くことがあります

これと同じ様なことが、火力発電所のボイラーなどでも起こることがあります。

これらは全て、水中に微量存在する不純物に由来するものです。

 湯垢は、水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分の炭酸塩が水の沸騰と共に濃縮し、固形化したものでスケールと呼ばれます。このスケールが蓄積すると、伝熱効率が低下して発電効率が低下したり、機器構成材料腐食などの原因となります。食堂や工場などで使用されている小型ボイラーには、「軟水器」が設置されています。この装置にはカチオン交換樹脂が使用されていて、水中に存在するカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分をイオン交換反応により除去して、スケールが蓄積することを防止しています。軟水器では硬度成分の除去に限界があるため、定期的に食塩で再生操作を行い、再利用しています。

 水道水や工業用水中には、硬度成分以外の不純物も存在します。お湯を沸かし続けると、その不純物が濃縮し蓄積します。すると、やかんの材料である金属が徐々に腐食し、進行すると最終的には穴が開いてしまいます。 また、硬度成分やそれ以外の不純物が蒸気と共に蒸発する「キャリーオーバー」事象が発生してしまいます。火力発電所の場合、蒸気は高速で回転する大量の羽根を有するタービンに運ばれるため、蒸気中に不純物が存在するとその不純物がタービン羽根に付着し、タービンの性能を低下させることになりかねません。この原因として挙げられる不純物例としては、塩化ナトリウムなどの海水由来成分や、シリカ、鉄など天然に多く存在する物質になります。

 これらのトラブルを未然に回避するために、脱酸素剤(防食剤)やスケール防止剤等の薬品を添加する方法もありますが、ボイラーや原子炉に供給する水の純度を高める必要があります。そのために、イオン交換樹脂を用いた「純水装置」や「復水脱塩装置」が設置されています。 

 まずは、発電設備に純水を供給するために「純水装置」を使用します。工業用水を「2B3T式」と呼ばれる構成の装置などで純水を製造します。これをプラントに供給することで、水中の不純物に起因するトラブルを回避します。

 また、ボイラーや原子炉で発生しタービンで仕事をした蒸気は、海水で冷却された後にボイラーや原子炉に戻していますが、この途中で「混床式」の「復水脱塩装置」で浄化しています。これにより、発電プラント内では純度の高い純水が常時、循環していることになります。 特に原子力発電プラントでは、放射性物質を閉じ込める必要があることから、材料腐食による影響を低減するため、非常に厳しい水質管理が行われています。

このような用途で使用されているイオン交換樹脂ですが、その性能は水質の高純度化要求と共に高度化が進んでいます。高度化された例は、以下の通りです。

①均一粒径樹脂

 まずは、均一粒径のイオン交換樹脂です。混床式の純水装置では、カチオン樹脂とアニオン樹脂を混合して使用していますが、定期的に薬品により再生を行っています。その際、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を比重差により分離するのですが、幅広い分布(350~1200μm)を持つイオン交換樹脂を高精度で分離することは困難です。これを回避するために、分離性能の高い均一粒径のイオン交換樹脂が開発されました。現在では、高度な水質が要求されるプラントで広く使用されています。

②高架橋度カチオン交換樹脂(当社:ULシリーズ)

 イオン交換樹脂は水中に存在する不純物を除去するのですが、イオン交換樹脂そのものから極僅かですが不純物が溶出します。この事象は、長年使用したイオン交換樹脂ほど顕著になります。特にカチオン交換樹脂から溶出する不純物からは硫酸イオンを生成する可能性があり、この硫酸イオンは材料腐食の原因の一つと言われています。

 これを回避するために開発されたのが「高架橋度カチオン交換樹脂」になります。これは、イオン交換樹脂の母体構造の重合度を高めることで、優れた化学的安定性を発揮するものです。標準的なカチオン交換樹脂と比較して溶出する不純物量が少なく、長期間使用しても劣化が進行しにくい特徴を有しています。加えて、単位体積当たりの交換容量も大きいことも特徴として挙げられます。

 当社ULシリーズの高架橋度カチオン交換樹脂は、復水脱塩装置で使用されている汎用樹脂と比較して、有機物の溶出量、特に水質低下の原因となる高分子量の有機物の溶出量が少なく、安定な特性を有しています。現在では、より高度な水質を要求される原子力発電プラントだけでなく、幅広く使用されています。

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