資源回収、重金属除去

金属資源の回収

周期律表を見ると、100種類を超える数の元素があります。大別すると、「金属元素」と「非金属元素」があり、一口に「金属」と言っても非常の多くの種類があります。鉄やアルミニウム、銅、亜鉛、スズ、鉛は地球上の存在量が多く、「ベースメタル」と呼ばれます。
一方、その他の金属元素の呼称として、「貴金属」「レアメタル」「レアアース」という分類があります。

貴金属

「貴金属」は、その名の通り貴重で、高価で、光り輝く物質のイメージがありますが、化学的には「化合物をつくりにくく希少性のある金属」と定義されています。これらの条件を満たす元素は、金 (Au)、銀 (Ag)、白金 (Pt)、パラジウム (Pd)、ロジウム (Rh)、イリジウム (Ir)、ルテニウム (Ru)、オスミウム (Os) の8つであり、これらを一般に貴金属元素と言います。オリンピックでは金・銀・銅メダルですが、銅は貴金属に含まれません。

レアメタル

「レアメタル」には明確な定義はありませんが、「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要(経済産業省)」で、産業に利用されるケースが多い希少な非鉄金属を指し、構造材料へ添加して特性を向上させたり、また電子材料・磁性材料などの機能性材料などに使用されています。電池で使用されているリチウムや、航空機やロケットの材料として用いられている軽量で強いチタン、ステンレスの材料として鉄に添加されているクロムやニッケル、電球のフィラメントに使われているタングステンなどがここに含まれます。

レアアース

周期律表で三族元素であるスカンジウム、イットリウム、ランタンからルテチウムまでの17元素は、一般的に希土類元素、あるいは「レアアース」と呼ばれています。強力な永久磁石に欠かせない「ネオジム」や「ジスプロシウム」、強力な固体レーザーやカラーテレビの蛍光体に使用される「イットリウム」、研磨剤の「セリウム」、光磁気ディスクに用いられる「テルビウム」など、これらのレアアースもまた、現代の産業を支える重要な元素です。大部分は世界産出量の多くを占める中国からの輸入に頼らざるを得ず、一時、このレアアースを巡る問題があった事が記憶に新しいものです。但し、「希:レア」の名がつくものの、金や銀などの貴金属に比べて存在する割合は高く、ある程度の量が地球上に存在します。

これら貴金属、レアメタル、レアアースを周期律表で見ると、以下の元素が該当します。

(Pd、Ptをレアメタルに含む場合あり)

金属資源と重金属除去

これら金属資源の製造には様々な方法がありますが、イオン交換樹脂やキレート樹脂を用いる場合があります。

金属の多くは水中では+イオンの状態で存在するため、カチオン交換樹脂で吸着・回収が可能です。また、金やクロムのように-イオンと錯体を形成してマイナスの錯イオンとして存在するものもありますが、この場合はアニオン交換樹脂で吸着・回収が可能です。また、特定の金属のみを選択的に回収したい場合には、キレート樹脂が用いられます。キレート樹脂には種々の官能基を有するものがあり、溶離剤を選択・工夫することで、特定の金属のみを回収することが出来る場合があります。

ここで、貴金属を一例として説明します。貴金属は身につける宝飾品以外にも様々な用途で使用されています。東京オリンピック2020で使用するメダルに都市鉱山と呼ばれるPCやスマートフォンなどの廃棄物から回収することが有名になりました。工業分野で回収している貴金属例を以下に示します。色々な用途・材料で貴金属が使用されていることが分かります。

【貴金属の主な利用先】

業界 材料
半導体 ウエハー、IC、LSI、蒸着材、など
メッキなど表面処理 メッキ廃液、洗浄液、など
写真材料 銀塩フィルム、感光材料液、など
医療分野 歯科材料、骨材、など
化学工業 触媒、電極、など
装飾品 宝飾品、塗料、など
電子分野 携帯、スマホ、PC、テレビ、など

金などの非常に高価な貴金属の場合、金を含む溶液からキレート樹脂やアニオン交換樹脂を用いて吸着させ、樹脂を焼却して金などを回収する場合があります。

様々な金属が工業的に活用されている一方、1960年代(昭和30年代)を中心に、金属による公害問題が発生しました。主なものには以下の様なものがあることは、ある年代以上の方はご存じかと思います。

水俣病:水銀
イタイイタイ病:カドミウム
その他中毒症:鉛、ヒ素、など

水俣病は、工場排水中に含まれていた有機水銀が魚に蓄積し、その魚を食用としていた漁民を中心に中毒症状を起こしたものです。イタイイタイ病は、神岡鉱山からの排水中に含まれたカドミウムが神通川流域に流出し、作物や飲用水を介して多発性近位尿細管機能異常症と骨軟化症を引き起こしたものです。その他にも人間にとって有害な物質があり、様々な規制がかけられ、現在の日本では安全に過ごすことが出来るよう対策が取られています。

有害物質として健康項目で規制されている重金属は、カドミウム、鉛、クロム、ヒ素、水銀化合物およびセレンです。また、生活環境項目で規制されている重金属には、亜鉛、銅、溶解性鉄、溶解性マンガン、クロムなどがあり、ニッケル、アンチモン、モリブデン、全マンガンなどは要監視項目に指定されています。これらの重金属は工業的に有用な金属であるため、一般的な工場排水に含まれている可能性があります。

そこで、環境基準および排出基準(項目によっても異なるが、概ね環境基準の10倍)が定められており、基準を超える水質汚濁が生じた場合には、その対策が求められます。
環境省が定める一般排水基準の一部を以下に示します。有害物質やその他の物質として、この他にも様々な項目で許容限度値が定められています。

【一般排水基準の一例】

物質の種類 許容限度
カドミウム及びその化合物 0.03 mg Cd/L
鉛及びその化合物 0.1 mg Pb/L
六価クロム化合物 0.5 mg Cr(VI)/L
砒素及びその化合物 0.1 mg As/L
水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物 0.005 mg Hg/L
アルキル水銀化合物 検出されないこと
銅含有量 3 mg Cu/L
亜鉛含有量 2 mg Zn/L
溶解性鉄含有量 10 mg Fe/L
溶解性鉄含有量 10 mg Mn/L
クロム含有量 2 mg Cr/L

工場排水など、水中に存在する金属を回収する方法としては、アルカリを添加することで金属水酸化物として沈殿させたり、凝集剤を添加することで、沪別して回収する方法が行われていますが、これらの方法では極微量の金属を回収することは難しい場合があります。その場合に用いられるのがイオン交換樹脂やキレート樹脂になります。カチオン交換樹脂は+イオン、アニオン交換樹脂は-イオン全てを吸着するため幅広く使用されます。

一方、例えばナトリウムイオンが大量に存在する水から、極微量の金属を回収する場合に用いられるのがキレート樹脂になります。キレート樹脂は、様々なイオンが存在する中から特定の金属を選択的に回収する特徴を有しています。付与している官能基の種類により選択的に吸着する金属の種類も異なるため、最適なキレート樹脂を選定する必要があります。キレート樹脂と選択的に吸着する金属の例を以下に示します。処理する水の性状と吸着したい金属により、最適なものを選定する必要があります。

【キレート樹脂と対象元素の例】

交換基 選択性
イミノジ酢酸 重金属全般。Cu、Hg、Pb、Ni、Zn、Cdなど広く対象。
ポリアミン 水銀や貴金属を対象。
グルカミン ホウ酸選択性。
アミドキシム 銅や貴金属の回収。
ホスホン酸 遷移金属の回収、除去。
スルホン酸 遷移金属の回収、除去。
チオ尿酸 水銀や貴金属の回収、除去。
アミノリン酸 カルシウムや原子量の小さい金属の回収、除去。
ビスピコリルアミン 銅やニッケル、コバルトなどの回収、除去。
セミチオカルバミン酸 水銀を選択的に吸着。
チオール 銀、銅、鉛、カドミウム等の回収、除去。

ここで、一例として海水からの金属の回収を考えます。

ご存じの通り、海水中には高濃度の食塩(塩化ナトリウム)が存在していて、1ℓあたり30g含まれています。一方、リチウムは180mg、ウランは3.2mg、バナジウムは2㎎、ニッケルは0.48mg、銅は0.15mg、コバルトは0.0012mgと微量です(日本海水学会誌、Vol.51, No.5, P302 (1997) より)。アミドキシム型のキレート樹脂を用いると、海水中のウランやバナジウム、ニッケル、コバルトなどを選択的に回収することが可能です。またイミノジ酢酸型のキレート樹脂では、海水中の銅やコバルトを回収することも可能です。

以上のように、資源の回収や金属の除去にイオン交換樹脂・キレート樹脂を用いる技術が広く使用されていることが分かります。

イオン交換樹脂の用途についてもっと知る

(超)純水装置、軟水器 資源回収、重金属除去 食品、薬品精製 触媒用

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