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  • 技術コラム

イオン交換樹脂の劣化

 イオン交換樹脂は純水の製造や金属の回収など、幅広い用途に使用されています。通常の使用環境においては、 必要に応じて薬品による再生操作を行いながら1年以上の長期間に渡り使用されています。

 しかし、使用と共にイオン交換樹脂の色々な性能が低下してしまうため、交換が必要になります。このイオン交換樹脂性能の低下は、起きる事象も原因も様々です。これらを理解した上で対応することが、性能面や経済面から重要となります。

 イオン交換樹脂を使用している装置での「性能が出ない」事象には、様々あります。

  1.  ①処理水質が悪い。
  2.  ②水が流れない。
  3.  ③樹脂量が減っている。
  4.  ④脱塩装置が故障している。  等

 これらの事象の内、装置に起因する以下の様な要因に関しては、装置を確認することで把握することが容易で、対策も立てやすいです。

  • 水が流れているか?(ポンプ異常、弁類誤作動、差圧上昇、等)
  • 計測機器の異常(流量計、水質計、差圧計、等)

 一方、水質異常に関しては、計測機器(導電率計、pH計、等)の異常を除き、水質分析を実施して初めてわかる事象ですので、事象を把握して対策を検討・実施するには種々の検討が必要です。

 通常、「性能が出ない」というと、①の処理水質が悪いということになります。イオン交換樹脂を使用している側からすると、イオン交換樹脂の性能が低下したと考えますが、その要因には様々あります。一例を以下に示します。

1)イオン交換容量不足

 イオン交換樹脂を用いている装置で水質低下を来す要因の一つが「イオン交換容量の低下」です。
イオン交換樹脂はイオンを吸着することが可能ですが、吸着可能量には限界があります。新品樹脂の時には良好な性能が得られていたものの、使用中に水質が低下したり、処理可能水量が低下する場合があります。これには以下の様な理由が考えられます。

 ①や②の一時的な性能低下の場合には、適正な再生操作(頻度、回数)を行うことで性能の回復が可能な場合が多いですが、③の本質的な劣化の場合には、新品樹脂への交換が必要となります。これらの挙動を把握するためには、イオン交換樹脂を分析する必要があります。

 また、再生不良により交換容量が回復せずに水質低下事象が発生する場合があります。装置側の要因で再生がうまくいかない場合には、装置を修繕した上で再生しなおすことになりますが、それ以外の要因もあります。推奨されている以上の負荷をイオン交換樹脂にかけた場合、通常の再生を実施しても期待したレベルに回復しない場合があります。

 また、シリカやカルシウムなど再生しずらいイオン負荷もあります。余裕を持った装置運用をすることが大切です。

 一方、③の理由によりイオン交換樹脂は使用とと共に徐々に劣化が進行します。これは本質的な劣化になりますので、ある程度使用した時点で交換が必要となります。この理由による交換頻度は、装置により異なります。
 加えて、意外に多いのが原水の水質が変動することによる場合です。これまで、再生を2か月ごとに実施していたのに、採水可能期間が1か月持たないという場合、原水水質の変動が原因の場合があります。水中の不純物量は目で見て判断できませんので、脱塩装置の性能が変動した場合の理由として原水水質の変動を検討する必要もあります。

2)反応速度の低下

 イオン交換樹脂を用いている装置で水質低下を来すもう一つの要因が「反応速度の低下」です。イオン交換樹脂はイオンを吸着することが可能ですが、十分なイオン交換容量を有しているにもかかわらず、原水を通水してもイオン交換反応が行われない場合があります。これには以下の様な理由が考えられます。 

 水中に含まれるイオンは、イオン交換樹脂と接触することでイオン交換反応が行われます。そのイオン交換樹脂の表面に油などの有機物やさびや硬度成分などの無機物が模式図のように付着すると、イオン交換反応が行われずにリークして水質が低下する事象が発生します。特にアニオン交換樹脂でこの事象が発生するケースが多いと言われています。

 ①の有機物による影響ですが、表面に浮いているような明確な油は、イオン交換樹脂にとって、勿論禁物です。事前に油分分離装置などで除去する必要があります。また、水中に溶解している有機物(アルコール類や界面活性剤、など)も、アニオン樹脂の性能を低下させる原因となります。さらに厄介な理由が、油や有機物が付着すると性能の回復が非常に難しいことです。加温した苛性ソーダで再生しても付着している有機物を除去できず、樹脂交換が必要になる場合が多いです。

 ②にあるように、鉄や硬度成分が存在すると樹脂粒表面に固着して反応性を低下させる場合があります。これら無機物は酸により排除する場合がありますので、通常は苛性ソーダで再生するアニオン樹脂も塩酸で再生した後に苛性ソーダで再生するようなケースがあります。

 ③の本質的な劣化は交換容量の所で述べたように、イオン交換樹脂の交換が必要となる場合が多いです。再生しても回復しない、表面汚染もないような場合、本質的に劣化している場合があります。

3)物理的な劣化

 長期間イオン交換樹脂を使用していると、写真のように樹脂の割れが生じる場合があります。

このような事象が発生すると、以下の様な事が起きます。 

 このような事象が発生するとイオン交換樹脂としての機能を果たさなくなりますので、樹脂交換が必要となります。

 いずれにしても、「性能が出ない」場合の原因の究明や対策の立案は、ある程度の経験が必要です。当社では、水質分析やイオン交換樹脂の分析などを実施して適切な提案を行います。     

 

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