高純度樹脂（高架橋度樹脂）

高架橋度低溶出カチオン交換樹脂（ULシリーズ）

イオン交換樹脂は、水中に存在するイオンなどの不純物を除去してきれいな純水を長期間に渡り製造することが出来ます。しかし、長期間に渡り使用し続けると、プラスチックが光を長期間浴びることでボロボロになるように、イオン交換樹脂も使用と共に徐々に劣化します。特にカチオン交換樹脂は、吸着・捕捉した金属イオンが触媒として働いて酸化劣化を引き起こします。この反応は、以下のように起こると言われています。

このような反応が起きると、カチオン交換樹脂の性能が劣化して微量の有機物が溶出することになります。これは処理水質の低下事象を引き起こすとともに、イオン交換樹脂を全量交換する要因となります。
これを解決するために開発されたのが「高架橋度低溶出カチオン交換樹脂：ULシリーズ」になります。このカチオン交換樹脂は、従来のものより架橋度を高めることで以下の様な性能を有するものです。

• 架橋度が高いため、耐酸化性に優れ化学的に非常に安定です。
• 耐酸化性に優れるため、有機物溶出に起因する水質低下を起こしにくい特性を有しています。
• 高分子量の有機物の溶出が少ないため、アニオン樹脂汚染を起こしにくく、アニオン樹脂の性能低下に起因する水質低下を起こしにくい特性を有しています。
• 標準的なカチオン樹脂と比較して、交換容量が大きく採水量増加が期待できます。
• 耐久性に優れるため、強度が高く長期間の使用に耐えます。
• 上記の観点で、水質低下抑止と樹脂寿命延長、採水容量増加、を期待できます。

有機物の溶出挙動を評価した結果を以下に示します。高架橋度低溶出カチオン交換樹脂は、脱塩装置で使用されている汎用樹脂より有機物の溶出が少ないことが分かります。

また、イオン交換容量を評価した結果を以下に示します。高架橋度低溶出カチオン交換樹脂は、脱塩装置で使用されている汎用樹脂より交換容量が約２０％大きいことが分かります。

これらの観点で、「高架橋度低溶出カチオン交換樹脂：ULシリーズ」を適用することにより、水質を良好に保ちつつ樹脂寿命の延長が期待できると言えます。この高架橋度カチオン樹脂の物性例を以下に示します。

項目		標準グレード	高グレード（開発品）
市販イオン形		Na、H	Na、H
基本物性	総交換容量（eq/L-R）	≧2.5	≧2.5
	水分含有率（% - Na型）	28-34	28-34
	球形率（%）	≧95	≧98
	無亀裂率（%）	-	≧95
	見掛密度（g/ml）	0.85-0.95	0.85-0.95
	真比重（g/ml）	1.30-1.40	1.30-1.40
粒度	粒度0.315-1.25mm（%）	≧95	≧95
	均一系数	≦1.6	≦1.4
	有効粒径（mm）	0.40-0.70	0.40-0.70
押し潰し強度	平均強度（g/ビーズ）	-	≧350
	＜200g/ビーズ（%）	-	≦5
耐酸化性	低分子PPS（mg/L-R）	-	低分子PPS（mg/L-R）
	＜200g/ビーズ（%）	-	≦5
耐酸化性	低分子PPS（mg/L-R）	-	≦300
	高分子PPS（mg/L-R）	-	≦5
繰り返し再生強度	100サイクル後 破砕・クラック率（%）	-	≦2

上記の表は横にスクロールしてご覧ください。

高架橋度カチオン樹脂は、以下の様な適用先が想定されます。

• 火力発電所や原子力発電所の復水脱塩装置、純水製造装置
• ボイラー給水用純水（補給水）製造装置
• 半導体製造装置など、超純水製造装置の最終段ポリッシャ
• 系統にオゾンや過酸化水素、紫外線照射設備を使用している純水装置
• 酸化性物質を含む液体からの金属除去装置など

もちろん、一般の純水装置で使用しても、水質の高純度維持や長寿命化に有効です。