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  • 技術コラム

イオン交換樹脂の取り扱い・評価法

イオン交換樹脂は、水中に存在するイオンをイオン交換反応により吸着することが可能です。カチオン交換樹脂は+イオン、アニオン交換樹脂は-イオン、キレート樹脂は金属イオンを吸着します。例えば、水道水から純水を作りたい場合には、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂を充填したカートリッジ純水装置に通すことで、容易に純水を作ることが可能です。

 

水道水の様に、日本全国のどこでもほぼ同じ水質であれば、予めイオン交換樹脂が充填されたカートリッジに通水することで、非常に簡単に純水を作ることが出来ます。また、水道水であれば、どの程度の量の純水を作ることが出来るか、概ね予想が可能です。

しかし、どのような物質がどの程度存在しているか分からない水を浄化する場合や、高濃度の薬品を含む液体から特定の金属のみを除去したい・回収したいという様なケースでは、予め小さなスケール(規模)で確認試験を実施した上で、どの様な種類のイオン交換樹脂をどの程度の量使用するかを決定します。

勿論、処理したい液体に適当なイオン交換樹脂を適当量加えて撹拌し、上澄み液の分析をすれば、イオン交換樹脂で処理が出来るかが分かるように思いますが、これでは正確な情報を得ることは出来ません。加えて、イオン交換樹脂を取り扱うには、イオン交換樹脂特有の設備や、操作方法があります。これらを理解した上で、適切な設備を用いて適切な手順で試験を行うことで正確な情報が得られ、どの様な方法で処理すればよいかが判断できます。

ここでは、イオン交換樹脂を用いた小規模な試験方法と、実施する上で留意すべき点を紹介します。

◎イオン交換樹脂の前処理

イオン交換樹脂は、スチレン・ジビニルベンゼンの共重合体にスルホン基(カチオン樹脂)やトリメチルアミノ基(アニオン樹脂)、イミノジ酢酸基(キレート樹脂)などの官能基を導入してイオン交換能を付与しているため、内部に水分(水和水)を含んでいます。工場で製造する際、ある程度の水分を排除していますが、長期間安定に保管できるよう、湿潤状態で保管されています。

処理したい液体にこのイオン交換樹脂を投入すればイオン交換反応は可能ですが、新品樹脂は製造時に十分な洗浄を行っているものの、若干の不純物が残留しています。そこで、使用する前には純水などを用いて十分に洗浄した上で使用することが望ましいです。具体的には、イオン交換樹脂をビーカなどに採取し、そこに十分な量の純水を添加してガラス棒などで撹拌します。この際、純水が僅かに着色したり、僅かに臭気を感じる場合がありますが、これはイオン交換樹脂製造時の残留物ですので、危険なものではありません。その後静置して、ビーカを傾けることで上澄み水を排除します。この操作を繰り返すことで、イオン交換樹脂を洗浄します。

また、イオン交換樹脂の粒内には大小様々な細孔(ポア)があり空気が含まれています。使用前には一晩、純水中に浸漬して細孔内の空気を排除することが必要です。

尚、水以外の溶媒(特に有機溶媒)で使用する場合には、水と溶媒を置き換える溶媒置換や、水分を除去する乾燥操作などの操作を適切に行った上で使用します。また、用いる溶媒によりイオン交換樹脂の体積が急激に変化する場合があります。使用する溶媒により操作手順は異なりますので、事前にお問い合わせの上、実施下さい。

◎イオン交換樹脂の採取

化学実験を行う際、サンプルを正確に測り取ることは基本的な操作です。液体であればメスシリンダやピペットを用いて正確に図り取ることは容易ですが、イオン交換樹脂の場合、粒状であるため留意すべき操作があります。

前処理を行ったイオン交換樹脂をスポイトなどで採取して、メスシリンダに移します。イオン交換樹脂の界面のやや上まで水を入れた状態で、メスシリンダを叩きます(この操作をタップ法と呼びます)。すると、イオン交換樹脂の見掛け上の体積が減少します。この減少がなくなるまでタップし、正確な体積を図り取ります。

 ◎バッチ試験

採取したイオン交換樹脂は水中にありますので、吸引ろ過器などを用いて水分を除去します。この水切りしたイオン交換樹脂を、薬さじなどを用いてビーカに移します。

ここに処理したい液体を一定量加えます。目安としては、樹脂量:試料液=1:10程度の比率で添加します。数時間程度緩やかに撹拌した後に原液と上澄み液の分析を行い、イオン交換樹脂による処理が可能か否かを判断します。

 ◎カラム試験

イオン交換樹脂で液体の処理を行う場合、バッチ処理ではなく容器にイオン交換樹脂を充填して通水することがほとんどです。そこで、イオン交換樹脂による評価を行う場合には、カラムを用いた処理試験を行う必要があります。

ムロマック®ミニカラム(数mℓ規模)やムロマック®ガラスカラム(数10mℓ規模)などを用いて、カラムにイオン交換樹脂を充填します。この際、イオン交換樹脂層内に気泡が入らないよう、予め純水をカラムに入れておくことや、入った気泡を針金などで除く必要があります。

充填後、カラム側面を軽くたたいて、イオン交換樹脂をきれいに堆積させます。

処理したい原液をカラムに通水する準備をしますが、ムロマック®ミニカラムであれば専用のシリンジに試料を入れて通水します。ムロマック®ガラスカラムであれば分液ロートに試料を入れて通水します。

また、いずれのカラムでも、ポンプを用いて連続的に原液を通水することも可能です。ポンプを用いて通液することで、流量調整が可能となり細かい条件での試験が可能です。また、長時間の通水試験の実施が可能です。

ミニカラムの場合、樹脂層高が小さいため簡易的な評価となります。本格的な評価を行う場合には、ガラスカラムなどを用いて樹脂層高を100mm以上として下さい。また、通水流量は樹脂体積に対する1時間の通水量を5~20倍量(空筒速度SV:5~20)に設定して下さい(イオン交換樹脂量が10mLの場合、1時間当たり50~200mL通水)。

このカラム試験で経時的な変化を知ることにより、より細かな結果を得ることが出来ます。

処理する原液としては水系だけでなく、有機溶媒などでも同様の処理で評価可能です。但し、有機溶媒の場合にイオン交換樹脂中に存在する水が試験結果に影響する場合がありますので、事前に溶媒置換などの対処が必要となる場合があります。

以上のような試験でイオン交換樹脂の性能評価を行いますが、詳細な評価を行うためには経験が必要です。どのようなイオン交換樹脂を選定するか、どの様な条件で処理を行うかなど、経験を有する弊社にご相談下さい。最適な条件をご提案します。

◎評価を行う上での注意点

評価試験を行う上で、注意すべき点があります。主な内容は以下の通りです。

① 体積変化

イオン交換樹脂を取り扱う上で注意すべき点として、「体積変化」があります。湿潤の程度やイオン負荷、浸透圧による純水と薬品での環境変化、溶媒置換、などで樹脂体積が変化します。一般的には以下の様に変化します。

  • 湿潤状態から乾燥状態:収縮
  • イオン負荷:強酸性カチオン樹脂/強塩基性アニオン樹脂はイオン負荷で収縮
  •       弱酸性カチオン樹脂/弱塩基性アニオン樹脂はイオン負荷で膨潤
  • 浸透圧:薬品中で収縮、純水中で膨潤
  • 溶媒中:収縮

特にH型弱酸性カチオン樹脂は、イオン負荷すると体積が2倍程度となる場合があります。カラムが破損する恐れがありますので注意が必要です。

尚、イオンを吸着すると色調も変化する場合があります。

② 樹脂破損

バッチ法で試験を行う場合、マグネチックスターラーなどで強く撹拌すると、磨耗により樹脂が破損する場合があります。樹脂が破損すると微粒子が多くなるため、表面積が増加することで見掛け上、反応がより進行してしまいます。特に耐磨耗性の低いポーラス型樹脂では、撹拌ではなく振とうするなどの注意が必要です。

③ 試験温度

イオン交換樹脂によるイオン交換反応は化学反応ですので、温度に影響を受けます。低温より高温の方が反応性が高くなります。夏季と冬季に行った実験では、結果が異なる場合がありますので注意が必要です。

④ 原液の性状

酸化性の高い薬品など、イオン交換樹脂と激しく反応する場合があります。

最も注意を要する薬品の例として「硝酸」があります。アニオン樹脂と濃硝酸が接触すると激しく反応し燃焼する場合がありますので、特に注意が必要です。

イオン交換樹脂取り扱い経験のある弊社にお問い合わせの上、ご使用ください。

また、当社Youtubeチャンネルにて、イオン交換樹脂の取扱法や操作方法の動画を公開していますので、是非ご参照下さい。

https://www.youtube.com/channel/UCaHMpAvcjqpQm51fa90hfPg/videos

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