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  • 技術コラム

イオン交換樹脂の反応速度

 

 イオン交換樹脂は内部に移動可能なイオンを持っていて、カチオン交換樹脂は+イオン、アニオン交換樹脂は-イオンです。これが水に接触すると、水中に含まれるイオンと交換することで「イオン交換反応」が起こります。イオン交換樹脂の母体を有機物全般を示すRとして、+イオンをAとB、-イオンをCとDとすると、イオン交換反応は次のように書くことが出来ます。

 このような特性を有するイオン交換樹脂の性能を評価する項目として、「イオン交換容量」と共に重要な物性が「反応速度」です。イオン交換容量はイオン交換樹脂が有する吸着可能なイオン量を表しますが、反応に時間が掛かっては使い勝手が悪くなります。一方、反応時間が早くても、吸着可能なイオン交換容量が小さくては、すぐに使用できなくなります。

イオン交換樹脂の一般的な特性として、イオン交換容量が大きいものは反応速度が小さく(低く)、イオン交換容量が小さいものは反応速度が大きい(高い)特性があります。従って、どちらの特性を優先するかは、どの様な使用条件に適用するかで判断が異なります。

反応速度とは、一般的に単位時間当たりの濃度変化量を表します。

ここで、一例としてビーカーに水溶液を準備し、ここにイオン交換樹脂を投入した場合を考えます。例えば、食塩(塩化ナトリウム)水溶液にカチオン交換樹脂(再生型:H型)を加えた場合、水溶液中のNaイオンがカチオン樹脂中のHイオンとイオン交換し、水溶液中のNa濃度は図のように徐々に低下します。

 Na濃度は図ののように徐々に減少傾向を示します。濃度の減少傾向が早いほど、反応速度は高い(大きい)と言えます。一方、単位時間当たりの濃度変化量ものように変化します。初期は高い値を示しますが、イオン濃度が減少するにつれて単位時間当たりの濃度変化量も減少してしまいます。そのため、イオン交換樹脂のイオン交換反応速度(単位時間当たりの濃度変化量)を評価する目的では、このような静的でのバッチ法による評価を行うことは少ないです。

反応速度を求める方法として用いられているのが、実際の水処理における操作と同様、カラムと呼ばれる容器にイオン交換樹脂を充填し、そこに水溶液を通水して入口と出口の濃度変化を見るカラム法です。

 アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の混床に、所定濃度の原水(例:硫酸ナトリウム水溶液)を通水し、原水と処理水中のイオン濃度を測定した後、イオン交換樹脂の平均粒径や流量、交換容量、樹脂層高などの値から、物質移動係数K(MTC:Mass Transfer Coeficient)と呼ばれる、単位時間当たりのイオンの移動距離、即ちイオン交換樹脂粒内におけるイオンの移動速度を算出します。この値からイオン交換樹脂の劣化の有無を評価します。

 反応速度の評価指標としては、この物質移動係数の他に、カチオン樹脂若しくはアニオン樹脂1cm層高の単床の樹脂層に所定濃度の原水を通水し、原水と処理水中の濃度からイオンの除去率を算出する「シャローベッド脱塩率:%」があります。
 新品のイオン交換樹脂の場合、物質移動係数は2.0×10-4m/sec程度、シャローベッド脱塩率は30%程度の値を有しています。

 これらの反応速度を評価する方法では、条件を整えた上で試験を実施する必要があります。主な条件には以下の様な項目があります。

 これらを踏まえた上で試験条件を設定する必要があります。その上で、統一した条件で試験を行います。異なる条件で実施した試験で得られた物質移動係数(K値)やシャローベッド脱塩率の値を、単純に比較することは出来ません。
 これらで特に気を付ける必要がある因子は「粒径」です。均一粒径樹脂の場合は問題ありませんが、ガウス分布樹脂では注意が必要です。イオン交換樹脂は通常、純水に浸漬した状態でポリビンやビーカで保管します。その場合、粒径の大きい粒は下部に、粒径の小さい粒は上部に多く存在します。そのため、色々な部分からランダムにサンプリングする必要があります。若しくは、JIS標準篩などを用いて、樹脂粒径分布をある程度整えた上で試験を実施する場合もあります。

 イオン交換樹脂は経年使用と共に性能が徐々に劣化します。特に反応速度は様々な要因により影響を受けます。

 実際の装置では、温度や原水水質などの運転条件が変化します。イオン交換樹脂の性能が適切に維持されているか、使用に伴い劣化傾向を示しているかを正しく把握するためには、適切な条件で同一の試験を定期的に実施して、挙動を把握することが重要となります。
 試験条件は、実際の使用条件を模擬することが理想ですが、試験に時間がかかることや評価が難しいなどの理由から、加速的な条件(高濃度、高流速、等)で実施する場合が多く、長年の経験から設定する場合が多いです。

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