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  • 技術コラム

イオン交換樹脂の再生

1)再生操作

 イオン交換樹脂は、水中に存在する不純物のイオンをイオン交換反応により吸着し、水を浄化するなどの目的で使用されています。このイオンを吸着する能力ですが、吸着容量には限界があります。しかし、限界が達した時点で薬品による「再生」操作を行うことで、再利用が可能になります。

その様子は下図の様になります。イオン交換樹脂に不純物を含む水を上部より流し続けると、通水開始からある程度の時間はほぼ全てのイオンが除去された水が得られます。その後も通水を継続すると、イオン交換樹脂は吸着する能力を上回ってしまうため、出口水中にイオンが流出することになります。その時点で薬品により再生することで再利用が可能になります。+イオンを吸着するカチオン樹脂の場合には塩酸や硫酸などの酸溶液で、-イオンを吸着するアニオン樹脂の場合には水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)の様なアルカリ溶液で再生します。

 ここで、イオン交換樹脂を使用する典型的な例として、純水装置を考えてみます。純水装置では、カチオン樹脂とアニオン樹脂を別々の脱塩塔に充填して使用する装置:2B3Tなどと、カチオン樹脂とアニオン樹脂を混合状態で脱塩塔に充填して使用する装置:混床塔などの設備があります。

 2B3T式の脱塩装置では、前段のカチオン樹脂塔で+イオンを除去し、後段のアニオン樹脂塔でーイオンを除去します。原水をある程度の期間通水した時点で通水を止め、カチオン樹脂とアニオン樹脂をそれぞれ塩酸と水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)で再生します。その後、純水で十分に洗浄を行い、通水を再開します。

 一方、カチオン樹脂とアニオン樹脂を混合状態である混床で使用している場合には、事前にカチオン樹脂とアニオン樹脂を分離した上で再生操作を行います。

カチオン樹脂とアニオン樹脂の分離操作ですが、混合状態にあるイオン交換樹脂の下部から水を導入すると、分離が行われます。これは、カチオン樹脂とアニオン樹脂の比重が異なることと、粒径がカチオン樹脂の方が大きく作られていることによります。カチオン樹脂の比重は1.25~1.3、アニオン樹脂の比重は1.15~1.2程度と両社樹脂に差があり、この特性を利用して逆洗分離操作を行うと下図の様にアニオン樹脂が上部に、カチオン樹脂が下部に集まります。ここで、上部より水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を、下部より塩酸を導入し、中央部から再生液を排出することで、イオン交換樹脂が再生され交換容量が回復します。

一つのイオン交換樹脂塔でカチオン樹脂とアニオン樹脂を再生する場合、中央部分では酸とアルカリが混合してしまうため、再生による交換容量の回復が十分に行われない場合があります。

そこで、再生操作を効率的に行う方法として、イオン交換樹脂塔とは別にカチオン樹脂とアニオン樹脂の再生設備を設け、個別に再生する方法があります。再生操作の流れは、以下の様になります。

 イオン交換樹脂塔とは別に再生設備を設ける必要がありますが、カチオン樹脂とアニオン樹脂の再生が十分に行われることとなり、水質の確保がし易くなると共に大量の純水を製造できるメリットがあります。更に性能を向上させるため、分離操作や再生操作を十分に行うことが出来るよう、イオン交換樹脂装置を製作する会社は様々な工夫をしています。

2)再生特性

 カチオン交換樹脂は塩酸や硫酸などの鉱酸、アニオン交換樹脂は水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)などのアルカリを用いて再生します。またカチオン交換樹脂を用いた軟水器では、食塩(塩化ナトリウム)水溶液で再生を行います。

 再生に必要な薬品量は、イオン交換樹脂の種類や用途により異なりますが、一般的にはイオン交換樹脂1ℓあたり数100g程度の量に相当する水溶液を必要とし、1時間程度かけてイオン交換樹脂に通水します。また、薬品を流した後には純水を用いて十分に洗浄する必要があります。

「イオン交換樹脂」の章でも述べていますが、必要とする薬品量はイオン交換樹脂の種類により異なり、以下の様に整理できます。

 これらの特性はあくまで一般的なものです。イオン交換樹脂の種類は用途により使い分けていますので、最適な条件で再生を行う必要があります。この条件の設定には、多くの経験が必要です。

 

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