array(1) { [0]=> object(WP_Term)#1546 (10) { ["term_id"]=> int(2) ["name"]=> string(15) "技術コラム" ["slug"]=> string(45) "%e6%8a%80%e8%a1%93%e3%82%b3%e3%83%a9%e3%83%a0" ["term_group"]=> int(0) ["term_taxonomy_id"]=> int(2) ["taxonomy"]=> string(8) "category" ["description"]=> string(0) "" ["parent"]=> int(0) ["count"]=> int(10) ["filter"]=> string(3) "raw" } }
  • 技術コラム

イオン交換容量

●イオン交換容量の概要

イオン交換樹脂は内部に移動可能なイオンを持っていて、カチオン交換樹脂は+イオン、アニオン交換樹脂は-イオンです。これが水に接触すると、水中に含まれるイオンと交換することで「イオン交換反応」が起こります。イオン交換樹脂の母体を有機物全般を示すRとして、+イオンをAとB、-イオンをCとDとすると、イオン交換反応は次のように書くことが出来ます。

このような特性を有するイオン交換樹脂の性能を評価する項目として、もっと重要なのが「イオン交換容量」です。イオン交換樹脂が吸着可能なイオンの量を表す指標になります。通常は単位体積当たりのイオンの吸着量を当量で表記した値で、単位は“eq/ℓ”になります。この体積当たりの当量数としている理由は、1当量当たりの重量が元素による異なるためです。

標準的なカチオン交換樹脂のイオン交換容量は1ℓあたり2当量程度です。元素により吸着可能量は異なり、カチオン交換樹脂1ℓあたりナトリウムイオンであれば46g、マグネシウムイオンであれば24g、セシウムイオンであれば266g、吸着可能となります。従ってこの数値を見ることで、ある体積のイオン交換樹脂を使用した場合、どの程度の量のイオンを吸着できるかが概略、分かることになります。

「イオン交換容量」を表す言葉にはいくつかの種類があります。それぞれ意味が異なりますので、目的に応じて用いる必要があります。また、イオン交換樹脂の種類により、交換容量も異なります。これらを整理すると次のようになります。

●イオン交換容量の前処理

イオン交換容量を測定する上で重要なポイントに、コンディショニング(前処理)があります。イオン交換容量は単位体積当たりの交換容量ですが、イオン交換樹脂の体積は状態により変化します。

 ・乾燥すると体積が収縮。

 ・吸着しているイオン種により体積が変化。

例えば強酸性カチオン樹脂の場合、Hイオンが吸着した状態(H型:再生型)からNaイオンが吸着した状態(Na型:基準型)に変えると、樹脂体積は8%程度減少します。強塩基性アニオン樹脂の場合、OHイオンが吸着した状態(OH型:再生型)からClイオンが吸着した状態(Cl型:基準型)に変えると、樹脂体積は20%程度減少します。この特性はイオン交換樹脂の種類と吸着するイオンにより異なりますので、注意が必要です。

イオン交換容量を測定する場合、まずはイオン交換樹脂を純水中に浸漬して一晩程度放置して水になじませる必要があります。その上で体積を標準化するために、以下の様な処理を行います。樹脂毎に測定の基準となる吸着イオンが異なります。そのため、事前に薬品を通水してイオン形を揃える操作が必要です。

●イオン交換容量の採取

イオン交換容量を正しく測定するためには、測定するイオン交換樹脂の体積を精密に量り採る必要があります。最も簡易な測定法は、タップ法と呼ばれる、メスシリンダーを用いて読み取る方法です。純水に浸漬したイオン交換樹脂を水と共にメスシリンダーに静かに移し、底部や側面を軽くたたく(タップ)などして振動を与えます。振動を与えても変化がなくなったことを確認して目盛りを読み取ります。性能評価には通常、約10mℓの樹脂を用います。

また、水切りしたイオン交換樹脂を用いて見掛け密度(単位体積当たりの重量)を測定しておき、必要な体積に相当する重量を秤量する方法もあります。重量測定は精度よく実施することが可能ですが、水切り操作によるバラツキが生じる場合があり、注意が必要です。

●イオン交換容量の測定手順

イオン交換容量を測定する方法は色々な方法がありますが、一般的にはカラムにイオン形を調整したイオン交換樹脂を充填して、薬品を通水してイオン交換樹脂を通過した溶液を分析することでイオン交換容量を算出します。

カチオン交換樹脂の交換容量(中性塩分解容量、弱酸交換容量)の測定手順は以下のようになります。総交換容量は、中性塩分解容量と弱酸交換容量の総和になります。

アニオン交換樹脂の交換容量(中性塩分解容量、弱塩基交換容量)についても、使用する薬品は異なりますが、ほぼ同様の手順で測定できます。

また、イオン交換樹脂を使用していると、様々なイオンが吸着しています。このような使用中のイオン交換樹脂に、どのようなイオンがどの程度吸着しているかについても同様の手順で測定可能です。使用していたイオン交換樹脂をカラムに充填して、所定の薬品(塩化カルシウムや硝酸ナトリウム水溶液)を通水し、溶離液に含まれるイオンをイオンクロマト法や原子吸光法、ICP発行分析法などで定量分析して吸着容量を求めることが出来ます。特に使用中のイオン交換樹脂では、総交換容量に対する比率として表す場合があります。また、イオン吸着容量とイオン交換樹脂に対する通水量の関係から、水中に含まれるイオン濃度を推定する場合があります。超純水のようなきれいな水を分析しても、定量下限値以下で測定できない場合があります。この超純水をイオン交換樹脂に通水すると、極微量のイオンもイオン交換樹脂に濃縮します。濃縮後にイオン吸着容量を測定し、通水量が分かればpptオーダーやppqオーダーの濃度を推定できる場合があります(イオンクロマト法の原理と同じ)。

●貫流交換容量の測定

イオン交換容量は、イオン交換樹脂に吸着可能なイオン量を示すものですが、実際の使用条件では、全ての交換容量が消費できるわけではありません。イオン交換樹脂を装置で使用している条件で測定した、吸着可能なイオン交換容量を「貫流交換容量」と言います。

イオン交換樹脂を図のようにカラムに充填し、そこに使用条件を模擬した原水を通水して、出口水を分析して右の様な「破過曲線」を作成します。通常の試験では、通水初期は良好な水質が得られ、その後徐々に出口水質が低下(イオン濃度が上昇)します。装置では出口水質の管理基準が設定されれていますので、そこに達した時点を「破過点」と呼びます。

この破過点までに消費した交換容量が「貫流交換容量」となります。出口水質が原水と同じレベルになるまでにはある程度の通水が可能ですので、貫流交換容量の値は総交換容量の値より小さくなります。この貫流交換容量の値は、試験条件によって異なります。原水の水質や通水流量、イオン交換樹脂層の高さ、原水の温度、破過点のレベルなどによって変わってきますので、評価試験の実施には条件の設定が重要です。

お問い合わせ Contact

カタログダウンロード

製品に関する資料やカタログが
ダウンロードいただけます。

ご質問やお問い合わせはこちら

お気軽にお問い合わせください。