イオン交換樹脂は、様々な工業用途で使用されています。純水や超純水の製造、貴金属の回収、排水中の有害金属の除去などに用いられていることを紹介してきましたが、食品の製造や薬品・医薬品の製造でも活躍しています。
その中でも、多くのイオン交換樹脂が用いられているのが「砂糖」の製造です。
砂糖は、沖縄や南米などの温暖な地域で生産される「サトウキビ」と、北海道やヨーロッパなど冷涼な地域で生産される「てん菜:ビート」を原料として製造されます。
砂糖の製造工程の概要は以下の通りです。
サトウキビやてん菜を裁断して水に浸して糖液を抽出し、ろ過や不純物除去の工程を経て無色透明な糖液を作ります。これを加熱濃縮してきれいな砂糖の結晶を作り、乾燥させることで真っ白な製品の砂糖が出来上がります。この不純物除去の工程では活性炭などの材料が用いられていますが、「イオン交換樹脂」も不純物の除去に大きな役割を果たしています。
砂糖の精製でイオン交換樹脂の果たしている役割は、「脱色」「脱塩」「軟化」です。
砂糖の原料である糖液中には、糖以外の様々な不純物が含まれています。不純物であるカルシウムや有機酸などを除去する脱塩や軟化についてはイオン交換樹脂の本来の役割ですが、対象とする液が高濃度の糖液であるため、様々な種類のカチオン交換樹脂・アニオン交換樹脂から最適なものが選定されています。脱色については活性炭が主として用いられていますが、これで除去しきれない有機物をアニオン交換樹脂で除去しています。硬度成分はカチオン樹脂で除去し、脱塩はカチオン樹脂とアニオン樹脂が行っています。
砂糖は甘さと幸福感を感じさせてくれるだけでなく、疲れを取り脳の働きを助ける物質であると言われており、イオン交換樹脂はその中で一つの役割を果たしている製品です。
食品業界でイオン交換樹脂が使用されている用途のもう一つが、柑橘類のジュースやアルコール類などの液体の精製です。
柑橘類には「酸味」や「苦み」が強いものがあります。柑橘類の果汁には、ナリンギンやリモニンといった苦味成分と、クエン酸やL-アスコルビン酸(ビタミンC)といった酸味成分が多く含まれていて、これらが柑橘類ジュースの味を決めています。
これら苦味成分や酸味成分は、構造からわかりますようにアニオン樹脂にて吸着可能な物質です。アニオン樹脂に通液することでこれらの苦味成分や酸味成分を除去することで、甘い柑橘類ジュースを製品としています。
また、アルコール類の精製においてもイオン交換樹脂が活躍しています。ワインや焼酎類には不純物としての有機酸が含まれています。また、硬度成分も含まれます。更に、焼酎には悪酔いの原因となるアルデヒドが含まれています。これらを取り除いて美味しいアルコール飲料を製造するためにも、イオン交換樹脂が用いられています。
更に、医薬品の分野においても、医薬品に含まれる不純物や硬度成分の除去イオン交換樹脂が利用されています。これはイオン交換樹脂の本来の吸着・分離の働きによります。加えて、医薬品を製造する際には、様々な副生成物が出来てしまいます。この中から必要な薬品のみを抽出する役割も、イオン交換樹脂が果たしています。また、イオン交換樹脂そのものを服用することで病気を治す役割を果たしているものもあります。カリウムは血圧を下げたり筋肉の働きを助けるなど人体にとって必要な物質ですが、摂取しすぎると病気となる場合があります。このカリウムを吸着するために、法律などで認められた特別なイオン交換樹脂を摂取することもあります。
イオン交換樹脂は純水を製造したり金属を回収するために重要な役割を果たしている工業製品ですが、身の回りの食品や医薬品を製造するためにも重要な役割を果たしています。家庭内でのパーティーで、甘いジュースを楽しんだり、美味しいアルコールで気分よく酔うことにも活躍しています。
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