アニオン樹脂

アニオン樹脂の特性

アニオン交換樹脂(陰イオン交換樹脂)は、内部にプラスの電荷の固定イオンを有し、それを電気的に中和するマイナスの電荷のイオンが存在しています。このマイナスイオンは他のイオンと交換することが可能であることから、水中に存在する-イオンを吸着する目的で広く使用されています。

アニオン交換樹脂のイオン交換原理

アニオン交換樹脂は大別すると2種類あり、官能基として4級アミンを有する強塩基性アニオン交換樹脂と、1~3級アミンを有する弱塩基性アニオン交換樹脂があります。

イオン交換樹脂 交換基 構造
強塩基性アニオン交換樹脂 4級アミン
トリメチルアンモニウム基
(Ⅰ型)
4級アミン
ジメチルエタノールアンモニウム基
(Ⅱ型)
弱塩基性アニオン交換樹脂 3級アミン
(ポリアミン)
3級アミン
(ジメチルアミン)
1級アミン

アニオン樹脂の汎用例

  1. 強塩基性アニオン交換樹脂は幅広いpH領域で使用でき、どのような-イオンでも吸着可能であることから、汎用性が高く使用されます。この強塩基性アニオン交換樹脂は、ポリスチレンの部分をR、4級アンモニウム基をNで表すとR-NOHで表すことができ、4級アンモニウム基は強塩基であるため水中ではpHに関係なく次のように解離します。

    R-NOH ⇆ R-N+(固定されたイオン) + OH-(可動できるイオン)
  2. 可動できるイオンが他の+イオンと交換するのがイオン交換反応であり、被交換電解質が塩基性か弱酸塩の場合は次のようにイオン交換します。この反応は中和反応であるため、反応し易くバッチ式でも交換することができます。

    R-NOH + HCl → R-NCl + H2O
    R-NOH + NH4Cl → R-NCl + NH4OH
  3. 被交換電解質が中性塩の場合は交換反応によってアルカリができ、これが逆反応を起こすため、交換平衡が成立します。バッチ式でこの交換を行うと交換平衡が成立し、交換反応を完成することは出来ません。

    R-NOH + NaCl ⇆ R-NCl + NaOH
  4. 強塩基性アニオン交換樹脂にはトリメチルアンモニウム基 R-N+(CH3)3OH を持つⅠ型と、ジメチルエタノールアンモニウム基R-N+(CH3)2CH2CH2OH を持つⅡ型と呼ばれる2種類があります。どちらも強塩基性ですが、Ⅱ型は塩基性がやや低く弱酸イオンに対する交換性が劣る一方、再生しやすい特性があり、用途により使い分けています。カチオン交換樹脂と同様、アニオン交換樹脂もイオンの種類によって交換性にし易さ・し難さがあります。

    強塩基性アニオン樹脂:SO42->I->NO3->Br->Cl->OH-

    選択性によるイオンの分離例

    例えばOH型アニオン交換樹脂にSO42-, Cl-イオンを含む水を通水すると、樹脂層の上部に最も吸着しやすいSO42-の吸着帯が存在し、次にCl-の吸着帯が存在し、下部にはイオン交換にあずからないOH型の樹脂が存在することとなります。この特性を利用して、水中に存在するイオンが吸着されることとなります。また、水処理において鉱酸の吸着であれば強塩基性、弱塩基性アニオン交換樹脂で可能であるが、除去対象として含まれるケイ酸(シリカ)の除去には強塩基性アニオン交換樹脂でのみ可能です。

    アニオン交換樹脂でもイオン交換反応は可逆性があることから、この特性を活用して「再生」操作が行われます。これは、アニオン交換樹脂のイオン交換反応が進行した時点で、高濃度の薬品を大量に通水することにより、吸着しているイオン種を元の状態に戻す操作です。一般水処理で使用される場合には、OHイオンが吸着したアニオン交換樹脂にClイオンなどが負荷します。ここに、高濃度のOHイオンを含む水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液を流すことにより、吸着しているイオンをOHイオンに戻すことが可能となり、再度、使用できることとなります。

  5. 弱塩基性アニオン交換樹脂も基本的なイオン交換反応の原理は強塩基性アニオン交換樹脂と同様ですが、以下のような特徴があります。

    • 単位体積当たりの交換容量が大きい
    • 再生による交換容量の回復がしやすい
    • アルカリ性領域では使用できない
    • イオンの選択性が小さい

これらの特性を生かしたうえで、水処理や有機酸の除去など、限定された用途で使用されています。
加えて、電子対を有する窒素原子を官能基に含んでおり金属と錯形成をするため、弱塩基性アニオン交換樹脂を金属回収用にキレート樹脂として活用する場合があります。

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